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  • 執筆者の写真Takoh

ジャズギター習得へのロードマップ⑪〜アドリブ演奏 その1ダイアトニック テンデンシー〜 

このジャズギター習得へのロードマップでは「ジャズギターを学問として、論理的、戦略的に身につけていく」考え方を提示しております。


詳しくは過去の記事をご参照ください。


さて、これまでの記事ではジャズの演奏というよりも、楽器を弾く技術や指板を理解する事など、ジャズを演奏する「前段階の準備」についてが中心でした。


今回からより実践的な内容に踏み込んでいきましょう。


ジャズギター習得の最大の魅力、そして醍醐味はやはり「アドリブ演奏」と言い切ってしまっていい様に思います。


この記事を読んでくださっている方の最大の関心ごともやはりそこにあるのではないかと思っています。


僕自身、最初にジャズに惹かれたのはアドリブで楽器を演奏するという妙技と、テンションコードのお洒落なハーモニーの響きでした。


個人的な話をすると、高校2年生くらいの時に、エリッククラプトンを聞いていた僕は「どうやらクラプトンはソロをアドリブで弾いているらしい」ということを知り、一体どうやってアドリブでメロディを弾いていくのだろう?とても強い疑問と興味を覚え、インターネットなどない当時(1990年代後半)、所沢のプロペ通りにあった楽器屋まで行き、ブルースのアドリブ教本を手に入れたのが最初です。


音楽の調性(キー)とペンタトニックスケールの存在を知った僕は、「こんな魔法のようなモノがあるのか!」と感心し、それからクラプトンのソロを耳コピしたり、図書館で借りてきたCDの曲に合わせて適当にアドリブで弾きまくって得意な気分になっていました。



今考えると、ジャズの複雑なコード進行ではなくシンプルなブルース等の1発もの(1つのスケールで弾けるコード進行)で遊びまくっていたのが、アドリブ演奏の入りに結果的に良かったのだろうと思っています。



ジャズのアドリブ習得には、様々な手法やコンセプトがあります。例えば「リック(フレーズ)を覚えて当てはめる」「偉大なる先人のソロをコピーする」などです。楽器屋、書店、インターネットなどで調べてみたら、おそらく膨大な量のアドリブ演奏のための情報が手に入るでしょう。

僕も様々なコンセプトや方法論を勉強してきましたが、やればやるほど基本的にはシンプルな方向に向かっていくのを感じます。


それは


感覚的に歌って気持ちいいメロディを弾く


ということです。

ようは鼻歌を歌う…様にアドリブ出来たらそれが一番内発的なアドリブ演奏です。



例によって英語学習に置き換えて考えてみましょう。

リックや先人のコピーは、英語学習で言うところの例文暗記です。

to不定詞、関係代名詞、受動態、比較級、様々な構文を暗記し、会話の中でその暗記した例文を状況に合わせて引き出す。当てはめる。

それを繰り返すうちに、何も考えずとも自然に会話で出てくる様になる。

その様なプロセスを経て内発的なアドリブ演奏につながっていくとも思います。


僕もリックの練習は結構やりました。オルタードスケールなんか全く歌えなかったので、毎日オルタードを使ったフレーズ集を歌う練習などしていました。(これは初歩ではないのでオススメしません)



が、僕の尊敬するLee Konitz氏はこの手法を否定しています。フレーズを当てはめるというやり方は、その場の音楽から出てきたものではなく不自然に用意されているものの様に感じる。という趣旨です。今日の夜のパーティで、この話題でこういう発言をしよう、と事前に練習しておいて、いざその時になったら全く周りの会話の流れと関係なく仕込んでおいた発言をするような不自然さがあるということですね。(Lee Konitz 『ジャズ・インプロバイザーの軌跡 アンディ・ハミルトン著』に詳しい)



僕自身は、ジャズ言語を勉強する上で、リックや偉人のコピーは必ず必要だと感じています。言語習得におけるインプットです。



が、これを当てはめる、というのは確かにフィットしないことが多い。

過去、練習したⅡーⅤのフレーズが綺麗にきまった!みたいな経験はほとんど記憶にありません。



コニッツ氏がどの様にアドリブを行なっているかというのは上記の本に詳しく書いてありますが、基本的には「今、鳴っている音に集中している」との事。



今、鳴っている音というのは、自分が演奏している音、周りが演奏している音。

そこから次にどの様な音を演奏するかが内発的に出てくるのを感じる。日頃から

その用意、トレーニングをして準備していく。

大雑把ですが、コニッツ氏のアドリブ方法論はこの様なシンプルなものでした。




ところが、アドリブ初心者にとって「内発的に出てくる音を弾け」と言われても、「いや、何もでてきませんけど…。」というのが普通かと思います。



英語のインプットを全くしていない人に向かって「好きに話せ」といってる様なものです。

ではやはり英会話習得のプロセスと同じ様に、フレーズや単語を覚えたり、ネイティブの英語をシャドーイングする様に偉人のプレーのコピーをしていくべきなのか…


僕はアドリブ演奏のはじめのうちからこの内発的なコンセプト、シンプルかつ直感的、野性的な感覚を忘れずにジャズギターを習得して欲しいと思っています。



ジョンコルトレーンは、超絶的な練習量を経てアドリブ演奏というよりも難解なコード進行を超アップテンポで吹き切るというアクロバティックなことをやった後に、最終的に完全なる内発的なfree jazzへと進んでいきました。



さて、内発的な感覚を研ぎ澄ませるために、1つ重要な「音の傾向」について説明します。

基本的に、Diatonic(ドレミファソラシドのこと)で構成されている音階(わかりやすくC Major Scaleに限定します)では調性(Tonality)が生まれます。


ドレミファソラシド、というC Major Scaleでは、Doが主音(Tonal center)です。

言い換えると、Doが安定した音、曲の終わりに持っていくとスッキリ終わった感じ(終始感)がある音です。


これは、その曲のなかでDoの音に引力があるとも言えます。

このDoの音を単体でもTonicといいます。

さらに、Doをルートに持つトライアドDo Mi Solの三和音(Cコード)これらも安定した和音としてTonic chord(Triad)


と呼ばれます。


そして、この3音、Do Mi Sol以外の音Re Fa La Tiはこの3音に向かっていこうとします。そっちにいくと安定する感じになるので、Do Mi Solにいきたい傾向があるのです。


これをDiatonic Tendency と言います。



ついでに、Solの音も上下どちらのDoにジャンプしても気持ちいい解決感があります。




これからC Major Scale一発でアドリブ練習をやっていこうと思うのですが、まずはこのDaitonic Tendencyを感覚的に理解しましょう。



Sol → Do(上下どちらでも)、Ti(シ) → Do 、Re→ Do、Fa→ Mi、La→ Sol

Ti,Re,Fa,LaはTonic音に向かっていく傾向があります。

傾向があるという言い方がしっくり来なければ、そっちにいくと気持ちいいよ。という感覚的なざっくりした感じでもいいと思います。


これを踏まえた上で、Key of CでCコード上で音が次の音へ向かっていく感覚を養っていきましょう。




上の動画では、Key of CでのDiatonic Tendency Tone pairsを弾いています。


出来たら上の動画に続いて演奏して欲しいですが、肝心なのはTiを弾いた後にDoに行きたくなる感覚を大切にしてください


Ti(シ、ここではB音)はLeading noteと呼ばれ、日本語では導音と呼ばれます。

何を導くかというと、Doを導きます。



これは世界各国共通の感覚なので、ぜひ養いましょう。

その他、ReもDoに、FaはMiにLaがSolに向かった時に「落ち着いた」と感じられる様な感覚を養いましょう。



もう1つ重要なことは、4拍目(弱拍)から1拍目(強拍)に向かって、TiからDoなどの解決をさせているという事にも注意しましょう。


動画の中盤以降からは、Tendencyを意識しながら、もう少し長いフレーズを弾いています。

コード進行はありません。



内発的に行きたい方向の音を感じながら弾いています。


また、Amazing Graceや大きな古時計、赤とんぼなどの童謡などのシンプルなメロディは、このTendencyが多くみられますので、それらの曲をソルフェージュしたり実際に弾いてみるのも感覚を養うのにはいいと思います。



今後はコード進行上でのアドリブ習得をあつかっていきます。

その前にまずこのDiatonic内でのメロディの傾向を理解しましょう。

 

本気のジャズギターを段階的に習得。

教室内ジャムセッションやフェスの出演などで実践経験もつんでいけます。

 



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