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執筆者の写真Takoh

リズムトレーニング

更新日:2023年1月31日

高校2年生の文化祭の時の話だ。



土日の二日間で行われる文化祭に向けてバンドを組んで練習していた僕は、

日頃はバンドメンバーよりもダンスをやっているグループと一緒に行動をしている事が多かった。



ダンスをやっているグループは、彼らもまた本校文化祭で初めてのダンスイベントを企画してそれが通った所だった。



彼らが放課後ダンスの練習をしている所によく遊びに行って、ブレイクダンスをやっている友達にウィンドミルのやり方を教えてもらって練習したり(基礎ができてないから当然できなかった)、ロボットダンスの動きを真似して遊んだりしていた。




そんな流れから

「多功もダンスイベント参加しない?」

と言われ、面白そうだから参加することにした。



そこで初めてダンスの動きの基礎を学ぶことになったわけだが、

まず驚いたのは、僕が挑戦したロックダンスでは、リズムをアップで取ることが基本だったこと。

裏拍をアップで取るという感覚は、裏を返せば表拍をダウンで取ればいいのではないか?

と思うかもしれないが、感覚は全然違う。




僕はこの基礎的な感覚の理解に時間がかかった。結局、高校生の当時は、裏拍をアップで取れているのか取れていないのか、そんなことすらわからない状態で本番を迎えた。



僕の動きは散々だったが、当時、同級生でうまかった友人の動きは基礎がしっかりできている上での表現だというのは見ていてわかった。




思い返せば、リズム感覚を人生でトレーニングしたのはこの時が初めてだったかもしれない。

その後、僕は音楽の方向に大きくシフトしてそれ以来ダンスはやってないけれど、あの経験はいまでも凄く勉強になった。




音楽において、リズムはメロディ、ハーモニーと並んで3大要素と呼ばれる非常に重要なファクターなことは言うまでもない。

あえて言う必要があるのは、リズム感は養えるという事だ。




僕の生徒で、「自分はリズム感がないんで」と口にする方がいるが、この発言には先天的にリズム感が備わっていないという意味を内包しているように感じる。

正しくは「自分はリズムのトレーニングを積んでいないので、現在はリズム感がない」というのが正解で、ほとんどの方が、トレーニングを積めばある程度のリズム感を習得する事が可能だと僕は考えている。





・僕自身がどのようにリズムトレーニングを積んできたか



まずは、「イヤートレーニング」でも述べたメソッドのリズムの項目でのトレーニング。

これは楽器を用いず、指揮をしながら口でリズムのみを読み歌うシンプルなものだった。




これを続ける事で、subdivide(分割)できる能力を養う事(4分音符、8分音符、16分、3連符などをすぐに分割できるようにする事)、自分が何拍目を歌っているかの拍感覚、何小節目を歌っているかの小節感覚、その後、途中で拍子が変わる変拍子や、3/4、5/4、7/4などの奇数拍子、その他6/8などの拍子にも対応できるように慣れていった。




これも全部指揮をしながら、楽器を使わずに行った。徹底的にそうする事で、楽器でのアウトプットと、リズム感を養うインプットの作業が明確に別のカテゴリーに属するものだと認識する事ができた。




僕は生徒が初めて来た時に、楽器初心者なのか音楽初心者なのかを訊くようにしているが、その両者は似ているようで全く違う。ドラムの素養がある人、ピアノの素養がある人などがギターを習いにくるのと、音楽が全く初心者では、音感、リズム感、読譜力などの音楽力がまるで違うからだ。




・インプットとアウトプットと乖離について



インプットするメソッドが少し進んで行った頃、自分のギターを四分音符でメトロノームに合わせて弾いたのを録音して聴いてみると、自分の音がメトロノームからずれているのに気がついた。




あっていると思っただけに少しショックを受けて、今度はメトロノームに合わせて歌ってみたのをとって聴いてみると、それは出音があっているように思えた。



なるほど、アウトプットする時に、リズムを身体で感じ、それを腕に伝え、指からピックで弦に触れ、弦の振動から音が出るというプロセスの間に、表現する上でのタイムラグがある事がわかった。



要は正しく感じられていても、表現がうまくできないという事だ。

こんなことは例えば絵を書いて見たらわかる。トレーニングせずに、目で見たものをそのまま描けるような人は滅多にいないだろう。




目で見たインプットをアウトプットするテクニックがついていないのだ。





まずは体で感じれるようにする事。そうすれば、自分がずれている時も当然判断ができるようになるし、よく言う「前ノリ、後ノリ」などの微妙なニュアンスの違いも、ビートの芯を体で感じれるようになってから初めて判断できるようになる。

これも耳で感じれる、聴き取れるようになる力を養うという点で、改めてイヤートレーニングのメソッドにリズムトレーニングの項目がある事に合点が行く。




音楽初心者でギターを始める人たちが、まず弾こうとすることは決して悪い事ではないが、ギターを構えた上で一旦指揮をして歌ってみる、などの練習は大切だと思う。

こういうトレーニングを避けたがる人たちは少なくない。


生徒の中に、6連符や32分音符など少しアドバンスな音符が多い早弾きの派手な曲をやりたがる方がたまにいるが、まずは正しくリズムを感じられる事が大切。

基礎的なインプットができないでアウトプットしようとするのは、基礎的なbreakin'(ブレイクダンス)のトレーニングも積まないでウィンドミルをやろうとするくらい無謀に等しい。

「いや、自分はギターを弾いている、習っているので」といったスタンスでは、なかなか音楽をコントロールできるようになるのは難しいだろう。





また日常の生活の中でも、やり方によっては上記の感覚はトレーニングする事ができる。

歩く1歩を2分割、3分割して見たり、踏切の音、ウインカーの点滅を2、4拍目でとってみたりするのもいいだろう。







僕が音楽家として、音楽をやっていない方との音楽力の差がついたと感じるのは、イヤートレーニングやリズムトレーニングなど、楽器を使わないトレーニングに多く時間を費やした事が大きかったように思う。




また別の機会に書くが、他にはクラシックギターにおけるギターテクニックや読譜力、またはハーモニーの知識とトレーニングによるハーモニー感覚と分析力の素養、そのようなものが僕を音楽家たらしめんとする大きな要素になっていると思う。



いまだにリズムに関しては、トリッキーなポリリズムや複雑な変拍子、または単純な四分や八分の音符など、突き詰めればもっと深くコントロールできるようにトレーニングは続けているし、そのスタンスは今後も変わることはないだろう。

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