このジャズギター習得へのロードマップでは「ジャズギターを学問として、論理的、戦略的に身につけていく」考え方を提示しております。
詳しくは過去の記事をご参照ください。
前回までは、考え方の紹介や知識のインプットの重要性や注意点をご紹介しました。座学的な内容で、これからジャズギターを習得するにむけて、いわば前提条件の様な内容でもあったかと思います。
さて、今回はとうとうギターを弾いていきます。
これを読んでいる方のギター歴は様々かと思います。クラシックギターを弾いていた、弾き語りをしていた、軽音部でギターを弾いていた。趣味で一人で弾いている。ギターの種類もエレキギター、アコースティックギター、ガットギター…
ギターの楽しみ方はそれぞれですが、ほとんどの方はこれからジャズギターを習得したい気持ちは同じ。そしてジャズギターはギターの種類を選ばないのも良いですね。今お持ちのギターで始められます。
なぜなら「指板のシステム」が同じだからです。
ジャズギターはギターの種類を限定しません。楽曲のコンセプトや時代性によって傾向はありますが、厳格なジャンルの様にこうでなければいけないという様な厳しい暗黙のルールみたいなものはありません。
指板をしっかり理解すれば、エレキギターを歪ませても、クラシックギターのナイロン弦の温かい音色でも、自分の好きな音色や楽器で楽しめるのがジャズギターの魅力でもあります。指板を理解すれば、数多くあるギターを好きなだけ生涯に渡って楽しめます。
ギターを楽しむためにも、ここでの内容を是非習得していきましょう。
指板を理解する
さて、ギターは構造上ピアノとは異なります。もちろん管楽器などとも異なりますが、同じ和音楽器としてのピアノと比較してみます。
ピアノの鍵盤を思い描いてください。
左から右へCDEFGABと白い鍵盤が7つ、そしてそれらの間に黒い鍵盤が5つ(EとF、BとCの間のみ半音で黒い鍵盤はありません)。全部で12個の鍵盤が繰り返し並んでいます。
この構造はとても水平方向(横)に直線で、Cの位置だけ覚えればたった1日でどこに何の音があるのか覚えることができるでしょう。
それと比較してギターはどうでしょう?
趣味などで長年ギターを演奏している人でも、ギターの指板上に何の音があるかしっかり把握している人はあまり多くない印象です。
例えばギターの2弦を見てみましょう。2弦の1フレットはC音です。
そこから2弦を右にずれていくと、C#(D♭)、D、D#(E♭)…という様にピアノと同様に音が半音ずつ上がっていきます。
ピアノの白い鍵盤と黒い鍵盤の様な視覚的な違いがありませんが、右に水平方向に動いていくと音が順次並んでいることがわかります。開始音がそれぞれの弦で違いますが、1本の弦だけをみればギターの構造は水平方向はピアノと同じ構造だといえそうです。
しかしギターは1つの弦で複数の音を同時に弾く、つまり和音を弾くことはできません。ピアノはこの水平方向だけで和音も鳴らせる構造ですが、ギターは1本の弦で1音しか出せないの和音を弾くときは複数の弦を同時に押弦して弾く必要があります。
そこでギターは、各弦の位置関係を把握しなければいけません。例えば6弦3フレットのG音の下、5弦の3フレットはC音。という様な具合です。そして6弦の3フレットのG音と1弦の3フレットのG音は2オクターブ離れています。
つまりギターはピアノ的な水平方向に加えて、弦をまたぐ垂直方向(縦)への動きも理解していかなくてはいけません。
さて、水平方向と垂直方向と、どちらが覚えるのが困難でしょう?
これはほとんどの方がギターの垂直方向への理解が難しいはずです。
ギターに取り組んでいる方で、水平方向に音が上がっていくことを理解している方は多いと思います。
垂直方向に、6弦と5弦が完全4度、5弦と4弦、4弦と3弦も完全4度、3弦と2弦が長3度、2弦と1弦がまた完全4度。(開放弦でEADGBE)みたいに把握している人はそんなに多くないのではないでしょうか?
引用元:宮古島から世界征服はじめました
上の指板図を丸暗記しよう!となるとちょっと二の足を踏んでしまう方も多いし、ギター教則本はこれらを縦方向に分割してポジションごとに掲載されているものも多いと思います(以下の様なイメージです)。有名な音大(書籍はBerklee pless)でも、指板を7個に分けた垂直方向のポジションでの運指トレーニングを紹介しております。
引用元:宮古島から世界征服はじめました
Reading Studies for Guitar: Positions One Through Seven and Multi-Position Studies in All Keys ペーパーバック – 1986/6/1 英語版 William Leavitt (著)
上の本は僕もかなりやったし、僕個人でいうと学生の時に、暇な授業中にノートに上の指板図の様なものを自分で書いて埋めるトレーニングをして指板の音名を覚えていきました。
指板を覚えるトレーニングをやった事があるこたならばわかると思いますが、大体が上記の様にポジション毎に区切って指板を垂直方向にブロックで覚えていっておりませんか?そしてえ身体で覚えてダダダッと速く弾ける様になったけれど、「じゃあG音はどこ?」と訊かれるとCから弾かないと分からない。
という状態になっている方もいらっしゃると思います。
この垂直方向の運指は僕もかなりトレーニングしましたし、アルペジオのトレーニングやコードのトレーニングでは確実に必要になるのでトレーニングはするべきです。
が、もしこれからジャズギターを始める。またはこれから指板の音名を覚える。のであれば断言します。
ジャズギターは水平方向を覚えた方が絶対にいいです。
今まで垂直方向のトレーニングに重点を置いていた方も、是非水平方向のトレーニングを取り入れてください。垂直方向だけを頑張ってトレーニングしていた僕は、ジャズギターで陥りやすいジレンマにはまりました。(それはまたどこかのタイミングで紹介します)
と言っても、水平方向は構造が簡単に理解できるから、「覚える」というのとはちょっと違うんじゃないか?と思うかもしれません。
そこで、下記の様なトレーニングを行います。
実際のトレーニング方法
《練習方法》
ルート音5弦のC音、6弦のC音を押弦しながら ①2弦のCDEFGABを弾く。 ②この時に、押さえているルート音との位置関係をしっかり覚える。(同じフレット内とか、2フレット右とか) ③その音名と同時にCに対しての度数、1、M3、5、6(13)、M7、9、 11、を理解する。
④1弦、3弦でも同じ様に度数とルートとの位置関係を把握しながら弾く。
ジャズギターを演奏している場合、具体的な絶対音(その音がGとかB♭とか)よりもルートやキーからの度数で捉えている方が多い様に感じます。
これは絶対音感がある人と相対音感の人とでは捉え方が変わるかもしれませんが、ジャズの様に移調が当たり前の様に行われるジャンルで、かつ絶対音感を持ってないのであれば、個人的には度数での把握の方が重要だと考えています。
むしろ、ポジションを固定して垂直方向のトレーニングは絶対音の把握、水平方向のトレーニングをルートとの度数の把握かつ指板の音名の把握ととらえてもいいかもしれません。(少し乱暴ですが)
なぜ水平方向が大切と度数が大切なのか
・ジャズはコードテンションを多用しますが、初めは5弦ルート、6弦ルートポジションで1、2弦にテンションを入れる事が多い。
・横の音との繋がり=Voice Leadingの考え方がジャズの即興演奏において最も重要だと筆者が感じているからです。
・構造の理解、弾く事がわりと簡単
2弦での音名とルートとの位置関係が見る事が出来る様になったら、1弦や3弦でもやります。押さえにくいですが、4弦でもやるといいでしょう。
Voice Leadingがよくわからない人も、垂直方向のトレーニングをやっている人も、今日からこの水平方向へのトレーニングを実践してみてください。
大切なのは
・ルートとの位置関係
・ルートとの度数
ルートをCに固定する事で、指板の音名も覚えられます。
まずはEがM3rd、Gが5th、BがM7thを覚えましょう。それがC△7の4和音のコードトーンです。
その後、Dが9th、Fが11th、Aが13thとナチュラルテンションです。
あせらずじっくり覚えましょう。
このトレーニングを1日10分やったとして、1〜3弦を5、6弦のルートとの位置関係や度数を把握するのに1ヶ月以上かかると思います。
楽器の構造の理解はそんなに音楽的なものでもありません。冒頭で述べた通り、ここを理解すれば様々な種類のギターを生涯に渡って楽しめる様になります。
外国語習得の様に、長い目で3ヶ月から半年などのスパンで結果が見てくるものだと思って取り組んでください。
今回のオススメ練習方法
・水平方向のトレーニング10分
・垂直方向のトレーニング10分
残り時間は好きなことを楽しむ。
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