前回のジャズギター習得へのロードマップ③にて、最後にジャズギタリストの注意点について述べました。
大概のギタリストは、当然ですがギター音楽を聴きたがる傾向があります。それはジャズでも然り、ジャズギタリストはジャズギタリストを数多く聴く傾向がありますが、これには注意が必要です。
というより、ギタリストがギタリストを聴くことはある意味当たり前で、特筆することではありません。つまり評価されるようなことではありません。(もちろんギタリストを聴くことは大切です)
しかし、ジャズの現場ではギタリストがツインで本番をやる、またはギタリストが大勢いる様な現場は滅多にありません。
たとえば演奏の仕事や一緒にプレイする仲間ができた場合、その多くはギタリスト以外、つまりベーシストやピアニスト、サックス奏者やドラマー、というように他楽器のプレイヤーが多いはずです。
そういった奏者たちも当然ながら自分の専門楽器のプレイヤーを細かく聴いていますが、ベーシストやドラマーはフロント楽器を限定せずに聴いているので、非常に幅広くジャズを聴いています。
当然ですが、自分のやっている楽器のことは、やっていない楽器よりも沢山の情報を得ています。誰それのピックの種類、ピッキングの角度や使用エフェクター、または音色の作り方、使用ギターのメーカーや使用弦のゲージにいたるまで、かなり専門性の高い方向まで色々と知っていることでしょう。
しかし、それらの情報の多くは他楽器奏者にとって取るに足らない、つまりどうでも良い情報がほとんどです。
ギタリストはこういう話をギター好き同士で盛り上がりたいという傾向がある様に思いますが(他楽器奏者もそうかもしれませんが)、ジャズの現場でこの様な話になることは多くありません。
僕が30代にクラシックギターに傾倒していった理由の一つに、その業界には当たり前ながらギター奏者しかいなかった楽しさがありました。
出会う人たちが皆ギタリストなのでそれはそれはコアな話で盛り上がります(笑)それはギタリストの僕にとって大変楽しいことでした。
ジャズの現場では、プレイではなく(またはプレイにおいても)会話をする場合にギターの話をすることは結構稀です。(ギタリストが集まった場合はちがいます。)
おそらく、ジャズギタリストとして他人と演奏する場合、ジャンゴ系でなければベーシストやドラマー、サックスなど他楽器と演奏することの方が多いでしょう。
ぜひ、一緒にプレイすることの多い他楽器のプレイヤーに注目して名盤を聴いてみてください。それは自身が演奏する上でも、その楽器奏者のプレイにアンテナを向ける練習にもなります。
個人的には、まずはフロント楽器よりもベーシスト、ドラマーに注目することをお勧めします。
フロント楽器は自然と耳が向きます。注意しないでも聴こえてきやすいからです。
出来たらベーシストがポール・チェンバースが好き、とかレイ・ブラウンが好きとか、ドラマーがエルビン・ジョーンズが好きとか、ブライアン・ブレイドが好きとかそういう話になった時に、「あの参加しているアルバムめっちゃいいよね!」と会話が弾むくらい注意して聴いてみることをお勧めします。
プレイの違いまで細かく分かればいうことありませんが、その辺りはいまだに僕も勉強しています。(というか実際にベースやドラムを練習しています)
他楽器の演奏を深く聴いていくことによって、現場でのコミュニケーションが大変取りやすくなります。話していて楽しい、というのは次もこの人と一緒にやりたい。という感情にもつながります(実力をともなってこそですが)
ジャズギターの名盤でも構いませんが、ギターに注目して聴いた後は、ベーシスト、ドラマー、ピアニストなど共演者の演奏に注意して耳を傾けましょう。
また、他楽器プレイヤーがどの様なことを考えてプレイしているのか、理解力を上げていくのはとても大切なことです。一緒に一つの曲を演奏していても、他楽器のプレイヤーが考えていること、聴こえているもの、注意していることなどはまるで違います。
それらを理解し合い、認め合い、視点を広げることは、良いフロント楽器プレイヤーになる上で大切な事ですし、一緒に音楽を作る上でも欠かせません。
ギタリストはギターの教則本を沢山買う傾向がありますが、他楽器プレイヤーの思考を勉強することも大変ためになります。
最近では国内外の有名ミュージシャンも動画コンテンツなどでレッスン動画などを数多くあげています。その様なものを活用するのも良いですし、実際に一緒にやるメンバーがいるのであれば、そのプレイヤーに色々話を訊くのもいいでしょう。
納浩一presents バイブル・フォー・ジャズ・ベース (リットーミュージック・ムック)
ジャズベーシスト、納 浩一さんの教則本ですが、ジャズギターの教則をたくさん買い漁るよりも、こちらに書いてあるベーシスト目線の教則の方が、ギター教則本には載っていない多くのことを学べるかもしれません。僕はとても勉強になりました。
上記の内容は少し打算的な感じもしますが、他楽器を知っていくことでより好きになっていくことも多いです。僕はジャズドラムを勉強することで、ジャズはドラムが一番かっこいい!と思うまでになっています。また、その楽器においてなぜそのプレイヤーが名人と呼ばれているのか、わかっていくのはとても楽しいことですし、よりジャズというジャンルが好きになっていくでしょう。
ジャズギターをやる場合、当然独奏やギターデュオなどのフォーマットもありますが、多くは他楽器との共演です。
打算的、戦略的ですが、このジャズギター習得へのロードマップは、論理的、戦略的にジャズギタリストになっていくための記事です。
ジャズギタリストになりたければ、他楽器に注意して聴くことをお勧めします。
本気のジャズギターを段階的に習得。
教室内ジャムセッションやフェスの出演などで実践経験もつんでいけます。
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