このジャズギター習得へのロードマップでは「ジャズギターを学問として、論理的、戦略的に身につけていく」考え方を提示しております。
詳しくは過去の記事をご参照ください。
今回は「読譜力の向上」についてです。
読譜といっても、コードからスケールを推測したり、コードアナライズする様な読譜ではなく、単純に「音符を読む」作業のことです。
ジャズは簡単なコードとメロディだけが書いてあるリードシートを共有して、そこから自由に演奏を広げていく。という即興性の高いジャンルですが、セッションやライブのリハーサル、またはライブの当日でも、さっとリードシートを渡されてすぐに音合わせ、というシチュエーションもよくあります。
ところで、ギタリストは概ね他の楽器に比べて読譜が弱い傾向がある様に思います。(あくまで印象です)
原因としては
・古くからタブ譜が一般的に流布している(タブ譜はルネッサンス期からあります)
・ピアノや吹奏楽とは違い、楽器の始め方が独学が多い為、コードダイアグラムなどを使用して、五線譜を用いないである程度弾けてしまう。
・ピアノと違い、複数の箇所で同音(異弦同音)が出る為、運指に迷ってしまう。
他にもあるかもしれませんが、僕自身が読譜に苦戦した過去の体験は概ねこの様な原因が主だったと思います。
ジャズを演奏する場合、他楽器との共演、楽譜の共有が基本になるのでタブ譜は用意されません。単純に五線譜を読む力=読譜力が大切になってきます。
個人的な体験談
僕自身、専門学校に入ったあたりはかなり読譜が苦手でした。というよりタブ譜ばっかり使っていたので苦手もクソもありません。やったことないフランス語を「苦手」とは言わないですよね?ってくらいのレベルでやってませんでした。
当然簡単なリードシートでメロディを弾けないので、「これはやばいよね。」ということで読譜の練習を始めたのが、実に20歳くらいのことです。
まず使ったのかこちらの本
以前、ジャズギター習得へのロードマップ⑤〜指板の理解その1〜 でもご紹介した読譜のための本です。指板のポジションも覚えられるので読譜と共にポジションを覚えていない人にはおすすめです。(どちらかというとポジションを覚えたい方向けだと思います。)こちらはポジションを覚えたらある程度できる様になりました。しかし、実際のセッションで使うリードシートなどの一般的な読譜は全然できません。
上の本は、リズミックな要素が非常にシンプルで、基本的に4分音符か8分音符しか出てきません。それに比べて実際の読譜ではリズミックな部分もかなり複合的に出てきます。そこで下記の本に取り組みました。
こちらを二周くらいやってから、ふと思いました。
「待てよ?これをやるならそもそもジャズのリードシートでトレーニングした方がよくないか?」
まぁその方が実践的ですし、曲も覚えられるし…ご判断はお任せしますが、僕自身はその様に感じました。
この時点では、僕は読譜が強いとはとても言えない段階です。というより初見で渡されても現場では使い物にならないレベルだったんじゃないかと今は思います。
その後、僕は紆余曲折ありクラシックギターの方向へシフトし、8、9年ほどクラシックギターを本格的に学び、国際コンクールで賞を頂いたり、海外で演奏させていただいたり、どっぷりクラシックギターに傾倒しました。(この辺りのことはまたどこかで記事にしたいと思っています)
本格的なクラシックは当然ですが五線譜です。
参考ですが、こんな感じです。クラシックギター界では誰もが知ってるソルの魔笛の主題による変奏曲です。(僕もグレード試験でこれをホールで演奏しました)
クラシックギターは下記の様な、漸進的(段階的に難しくなり、コンセプトが明確)なエチュード集がかなり充実していて、一曲一曲やっつけていってレベルアップしていく様がまるでRPGゲームを自分主人公でやっている様な感覚でとても楽しかった。というか性に合っていたと思います。
このシリーズのカルカッシ、カルッリ、ソル、ジュリアーニ、コスト、アグアド、これ以外にも有名エチュード(通称セゴソル、ヴィラロボス、ポンセ他)、など色々とやり込みました。
それと並行してクラシックギターのアンサンブルもやっていたので、改めてジャズにしっかり復帰した時に相当読譜が強くなっていました…とさ。
全然参考にならないかもしれないですね…(苦笑)
地球で頑張ってるのに、ナメック星に行って帰ってきたらめっちゃ強くなっていた。みたいな話になっていまいました。
今現在、ジャズを演奏しながら、または練習しながら読譜が強くなったと思う練習を紹介します。
まずは一番上に紹介した
Reading study for Guitar
これは為になりました。読譜を強くする前段階の準備として必要だと感じます。
そしてオススメは「Omni Book」です。
知っている方も多いかもしれませんし、なんだよ結局それかよ。と思う方もいるかもしれませんが、なんだかんだジャズの読譜ではジャズ言語で学ぶのが一番だと思います。(クラシックの読譜とジャズの読譜では少し慣れる部分が違います)
読譜に関して言えば2−5−1のリック集などよりこちらの方が断然ためになります。
なお、本当なら自分で採譜してそれを読譜するのが一番いいかもしれませんが、ハードルが高い方が多いと思います。
ちなみにパーカーは激ムズなので、マイルズディビスオムニブックから入るとちょうど初級っぽくていいです。
今はコルトレーン、スタンゲッツ、ソニーロリンズ、など相当数のオムニブックがあって面白いです。
僕はこれをまずはゆっくり読譜して、その後テンポを落とした音源で一緒にプレイして、出来るだけ原曲のテンポでできる様に頑張る。というのをやっています。
毎日のようにやっても曲によっては2ヶ月くらいはかかったりしますが、クラシックギターの曲なども一曲に最低でもそれくらいはかけるので、「長い」と思わずに取り組みましょう。
その他、使うのは上のThe Real Bebop Book。こちらはビバップの曲のみを収録したリードシートです。ビバップはテンポが速い曲が多いので、ある程度知っていないと演奏時に初見だと戦えません。(相当初見が強ければ別ですが、少なくとも今の僕はそこまでの初見力はありません)
なので日々練習していく、という感じです。
またビバップはそれ自体がジャズ言語なので、なんとなく似ている節回しなどが多くあります。これはクラシックなど別ジャンルをやっていてもなかなか培えません。
即興性の高いジャズというジャンルでは、耳を使って演奏しろ!譜面に頼るな!という声もよく耳にします。
それはその通りですが、実際の現場での情報ツールはやはり五線譜を多く活用します。
リハーサルで「この曲やりたいんでけど、一回弾くから聞いてもらって、二周目から入って」みたいなことは滅多にありません(セッションなどは譜面がなくてもやる時は多々あります)。
プロの現場でも、五線譜は世界共通言語です。
ぜひ最低限の読譜力は身に付けたいですね。
本気のジャズギターを段階的に習得。
教室内ジャムセッションやフェスの出演などで実践経験もつんでいけます。
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